第四章・宝を求めて



先日、モンバット等のパラゴンと戦った私は、
更なる敵を求めて再びイルシェナーの地へ向かうことにした。







慣れ親しんだムーングロウの宿で目覚め、







青房にまたがり、いざイルシェナーへ。







手頃な相手を求めて、イルシェナーの地ををさまよう。
己の力を過信する気はないので、強敵は後にする。







程なくして、土の精霊に出会った。
よし、こいつあたりがよいだろう。


所詮は下級モンスター、さして苦戦することもなく撃破していく。
10匹ほど倒した時だったろうか、明らかに通常とは違う速度で追ってくる敵を確認した。







間違いない、パラゴンである。







やはりパラゴンは、通常のものとは段違いの強さである。
何せ、喰らうダメージとスピードが違う。







適度に距離をとり回復しつつ、慎重に戦う。







どうやらパラゴンというのは、瀕死になっても決して逃げることなく最後まで戦いを挑んでくるようだ。
まぁ、あの速度で逃げられても困るのだが。







ひとまず倒すことに成功した。
個人的には、イフリートクラスの強さと感じた。







続いて、付近にいた火の精霊に戦いを挑んでみた。







割と早い段階でパラゴンが登場した。

いざ勝負だ!







土の精霊に比べ、体力が低いように感じる。
が、瞬間的な攻撃力はこちらの方が上だ。
なにせ、魔法を使ってくる。







落ち着いて戦えばなんと言う相手ではない。
無事、撃破することに成功した。


ふむ、このレベルでこの強さか・・・
正直、今の装備では少々辛い物がある。


勝利したとはいえ、油断できない相手であったのは事実。
何せ、喰らうダメージ量が多すぎる。







より上質な装備を入手するため、かつて良く戦ったリッチと対峙した。
もしリッチのパラゴンが出現したならば、勝てるかどうかは微妙である。







倒したリッチから、なにやら地図を発見した。
長年の経験より、恐らく宝の地図であろうとは思うのだが・・・確証はない。


解読できそうな人物を捜し出そうと、町へ戻ることにした。







久々に首都ブリテインに来てみたのだが・・・
なにやら様子がおかしい。 静かすぎるのだ。







銀行にも、人の気配がほとんど無い。
これはいったい・・・







すると、町中にリザードマンの姿を発見した。
おかしい、ガードが機能していないんだろうか。







郊外のリザードマンを屠ってみたが、次から次へと沸いてくる。
これはきりがない・・・


なにか怪しい雰囲気を感じつつも、何も発見する事は出来なかった。







ブリテインを後にした私は、ヘイブンの町に行くことにした。
こちらはいつも通り、ともするといつもよりも活気にあふれている。

もともとブリテインにいた人間もこちらに来ているのかもしれない。
ただ私は、このヘイブンという町の雰囲気はあまり好きではない。

ブリテインのような活気ではない、なにかドロドロした情念を感じるのだ。
そんな風に考えつつ、地図を読めそうな人間を捜し回る。







人は多いのだが・・・該当しそうな人物には出会えなかった。
ひとまずあきらめた私は、ムーングロウの町に戻ることにした。


何とはなしに港に行ってみると、水の精霊に遭遇。







適当に撃破しつつ、不意にあることを思い立った。







私は、かつてエルウッドの頼みを聞く際に購入した釣り竿を持っている。
これで釣りでもしてみようかと竿を垂らす。


・・・しかし、一向に魚の釣れる気配はない。
釣り人に軽く教えて貰った程度で釣れるほど、釣りの道は容易くないようだ。







場所を変えながら釣りをしていると、見知った顔が声をかけてきた。

「こんばんは〜」

リオン殿だ。


「おお、リオン殿」

「今日は珍しく釣りしてるんだ? 大物は釣れたかな?」

「いやはや・・・」


少しも釣れないことなどをリオン殿と話していると、何者かがいきなり話しかけてきた。





「死ぬには早い、かんがえなおしてー?!」


何事だろうか。


・・・どうやら、私を自殺志願者と勘違いしたようだ。
そんなに思い詰めた顔をしていただろうか。
確かにあまりの釣れなさに疲れた顔はしていたが。


「ところで・・・貴公は?」

「どらまてぃっくすとーりーてらーずの特攻隊長、えでぃんともうします」


関わってはいけない人種のような気がする。
しかし、どこか似たような雰囲気の人を知っている気もする・・・


「塩のヒトでしょおにーさんたち。
おねーちゃんたちがお世話になっています」



「姉・・・」


「複数形?」


店だのなんだの言っているが・・・
そうか、ルゥ殿だ!


「ルゥの妹です」






「ああ・・・そういえばどことなく、頼りない顔つきが似ている!」


「それ、誉めてないお?」


「ひどいなぁ・・・まぁ、確かに頼りないけど」


「こ、これは失礼、つい本音が」


更に余計なことを言った気がしなくもないが、この場は流すとしよう。





「これでもーとれじゃーはんたーやってるのよー」


トレジャーハンター。

・・・。





「遺跡荒らしか?」


「盗みはやらないわー。 地図解読って言うの?
ほら、誰かが地図を持って帰ってくるのを見てたら、なんかたのしそーだなーって」



「その家系で地図ねぇ・・・」

「エディンさんは迷子じゃないのかな?」


リオン殿も同じ事を思ったようだが・・・
ルゥ殿と言えば、ある意味天才的な方向音痴である。
姉たちがそうであるのならば、その妹はどうなのだ、と疑問に思うのも当然であろう。

話を聞くとはぐらかして否定をしないところを見ると、期待は出来ないようだが・・・


ん、地図解読?





「そうだ、丁度良かった。 ここにリッチからせしめた地図があるのだが・・・
当然読めるのだろうな?」






 「ちょっと拝見。 うん、半島だね!」


ふむ、本当に地図は読めるようだ。
そして、なにやらペンを買ってくると言ってどこかへ行ってしまった。

リオン殿はなにやら、自分へ遺産を託す遺言状だと騒いでいるのだが・・・
自分の遺言状を用意することを勧めてみた。





程なくしてエディン殿が戻ってきて、なにやら一枚の地図を取り出した。
どうやら世界地図らしい。
2枚の地図を、熱心に見比べているようだ。


「多分・・・ひすろす島かなぁ?」


そう言ったエディン殿を見たときに、奇妙な光景が目に入った。

ラマが2匹いる。
・・・まぁ、リオン殿であろう事はすぐに解ったんだが。


「エサはないぞ!」


何かを言われる前に先手を打ってみた。
エサがわりに爆弾ポーションを置いてみたのだが、
気に入らなかったらしく、事もあろうに投げつけて来た。
ラマ程度の投げる爆弾は華麗に回避した。

なおもリンゴをねだってくるラマ。



「自分のエサも釣れぬ者が、リンゴを持っていると思うか!」

我ながら、言っていて少し悲しいセリフではある。





「それもそおか・・・」


その上納得された。


「ふ・・・青房、お前にも辛い思いをさせる・・・」



そんな感傷に浸っていると。



「で、どーすんのこれ。 ヒスロスとーいよ?」


そうであった。 地図の話だ。


「どこであろうと、行かねばならぬ訳があるのだ」


そう、良い装備を手に入れるために行かねばならない。
決して、魚を釣るために船旅に出るわけではないのだ。

と、そんな話をしていたところに、また一人何者かが現れた。




「おや、こんなところで・・・奇遇ですな」


誰かと思えば、親方こと「真心」の登場である。






事の成り行きを話していくうちに、うまくお宝を発掘したら親方に強化して貰おう、と言う流れとなった。
さて、目的地であるヒスロス島は離島である、当然徒歩で行くことは出来ない。

となると、船が必要になってくるのだが・・・





どこからともなく、港に船が現れた。
聞けばリオン殿の船らしい。





「リオン殿にしては上出来ではないか」


「やるなラマ」


誉め言葉である。





船に乗り込んだ一同は、ゆったりとした船旅を想像していたのだが・・・





出向してすぐに、水の精霊に襲われる羽目になった。





しかも、倒しても倒してもすぐに現れる。
こんな様子では、この港はまともに機能していないのではないだろうか。





あげく、海蛇まで現れる始末。
まぁ、どちらにしろ大した相手ではない。

適当にあしらいつつ、沖を目指した。






大体、行程を半分ほど過ぎたところであろうか。
この狭い船にこの人数は、少々無理があったようだ。
どうにも揺れがひどい。


「しかし・・・揺れる船だ」


誰もが思っているであろう感想を述べる。
同意こそ無いものの、皆の表情が肯定を表している。



「陸は見えんな・・・」


前方を見つめていた親方が、陸地を恋しそうにそう呟いた。



目的地に着いたのはそれからしばらく経ってのことである。



陸が見え始め、いよいよ到着だと言うときに、私はあることに気が付いた。





「包帯が心許ないことに気づいた。 大丈夫だろうか・・・」



「うぁ・・・」



そんな会話をしつつ、上陸を終える。





「この地に住む者もいるのだなぁ」


エディン殿が「魔の地」と呼ぶ程のこの島には、意外に多くの住居が見られる。


「誰かに包帯分けて貰ったらどうかな?」


なるほど、これだけの家が有れば包帯ぐらい持っている住人もいるだろう。
探してみるか・・・と思った時のことである。





すぐ側の住居より、住人らしき人物が出てきた。
まぁ、自分の家の前で騒いでる人間がいれば気になるのは当然のことである。


「あ、すみません」


「はい」


「包帯売って貰えないかな?
セブンさんが包帯切らしちゃったんだって」



私が切り出す前に、リオン殿が交渉に入った。


「え、えっと、申し訳ないですが包帯は使わないので・・・」


「そうか・・・」


「ん〜それなら仕方ないおね。 無理言ってごめんなさい」


包帯戦士か獣医でもない限り包帯は必要ないであろう。
まぁそれでも、布ぐらいはありそうなものだが。






「お役に立てず、すみません」


家主が申し訳なさそうに呟いた。



「そうだ、この付近で売っていそうな店はあるだろうか?」



「えっと、東に行くとヒスロスの入口があるのですが、そのあたりにお店があったと思います
包帯を売っているかは、ちょっと不明ですが・・・」







「なるほど、行ってみる価値は有りだな」


有益な情報を得た我々は、まず先にダンジョン・ヒスロスの入口へと向けて進むことにした。





適当にベンダーを眺めながら進むが、今時包帯はなかなか売っていないようだ。
きらびやかな布は売っていたが、それを包帯するのはもったいないし、なにより高い。





歩きにくいジャングルを進みつつ、目的地を目指す。





見覚えのある場所に着いた。
ダンジョン・ヒスロスの入口である。


ここに来てリオン殿が、

「そおいえば、私も包帯少し持ってたんだっけ」


などと言い40程の包帯を取り出したではないか。
ありがたく頂戴しつつも疑問は残る。




目的の店には着くも目的の物は見つからず。
親方が店先で何かごそごそやっているかと思いきや、羊毛を紡いでいるようだ。


「50枚出来たぞ」


そう言い、包帯を渡してきた。
これで包帯の枚数は100枚を越え、何とかしのげそうである。


エディン殿に地図の場所を訪ねると、北の方とのこと。
とりあえず山沿いに北へと向かった。






その途中、野党の死体を発見した。
どうやら、死んでまだ間もないようだ。







何か使える物はないかと物色していたところ、恐らくこの野党を退治したであろう人物が現れた。
どうやらすぐ側の住人のようで、名をシンディと言うらしい。


「これから宝探しに行くんだお」

「いっしょにどうです?」

「いいの? 行きます! てか、行きたい」



ここであったのも何かの縁。
そんなこんなでメンバーが一人増えた我らは、再び地図の場所へ向けて進み出した。


「こんなとこで人に会えるのめずらしくって。 うれしー」


「私とてそう思う」


「た、たしかに・・・」


そんな会話をしつつ、北上する。






しかし、進んでも進んでもそれらしい場所には着かないようだ。
そしてついには、島の最北端までたどり着いてしまった。






「これなら、最初から北に降りた方が・・・」


「だって、リオンさんが・・・」


そんなやりとりをしつつ、エディン殿は地図を眺めていた。


「はっ、やまがあっち」


どうやら、地図を見間違ったようだ。
まぁ、こうなることは予想できたことだが・・・



「このへん・・・かも?」

来た道を少し南に引き返すと、どうやら目的の場所に着いたらしい。


「宝探しとは大変な物だな・・・」


「特に掘る人が方向音痴だと?」


「苦労の甲斐があると良いが・・・」





そんな声が聞こえていたかどうかはさておき。


「さ〜ほるよ〜」


との声と共に、エディン殿は地面を掘り始めた。





ざくっ・・・ざくっ・・・
小気味のいい音と共に、地面が掘り起こされる。


やがて宝の箱らしき物が掘り起こされたと同時に、モンスターが現れた。


出たのはリッチやOL等、中級クラスのモンスターである。
しかし、我らの敵ではない。
瞬く間にモンスター達の体は地に横たわった。


「他愛のない・・・」


「ね」


そんな感想を漏らしつつ、武器をおろす。


「しんでぃーさんがいてよかった・・かも?」


「ヒリュウとは強いものだなぁ・・」


「そういってもらえて・・・えへ」


光栄です、と言う言葉を飲み込み、代わりに笑みで返すシンディ殿。


「ねーおやかたー、そこの箱あけて?」


「ほうほう・・・・どれどれ」


そう言いながら、掘り出したばかりの箱に手をかける親方。





「うお」


ドォン! と言う爆発音と共に、閃光に包まれる親方。
どうやらトラップが発動したが、瀕死のところで何とか持ちこたえたようだ。


「ち・・・」


そしてすぐさま舌打ちする物と・・・


「In Por Ylem」


魔法でとどめを刺す者が。





かくして親方の体は虫から転がり落ちたのだった。

その場は側にいた流れのヒーラーに助けて貰い、事なきを得た。


「つい・・・」


「危ういところだった・・・」


その場は穏やかに済ませたかに見えた親方だが、内心は穏やかではなかったようだ。

以後、財宝を取り出す度に出てくるモンスターを撃破する際、故意に間違ってリオン殿を攻撃していた。

自業自得である。





以降は特に問題もなく、全ての財宝を取り出すことに成功した。


「よし・・・ぶんぱい?」


「ここでは落ち着かぬな・・・」


「南の方に平原がありそう」


「よし、いこう」






向かった先には野党がキャンプを張っていたが、軽く蹴散らして乗っ取ることに成功した。

これが取り出したお宝です、と出された袋の中身を見て、私は落胆せざるを得なかった。






「やれやれ・・・」


「大した物では無さそうだな」


まず第一に、私が扱えそうな武器がない。
防具の方は・・・まぁ、強化に成功すれば今よりはマシなものもある。


ここでようやく親方の出番である。
了解した、と返事をして強化をしに行った親方は、意味もない自信に満ちあふれていた。
結果はと言うと・・・


「見事に壊れた」


まぁ、そうだろうて。
続いて、もう一個のも頼んでみた。


「塵と化した」






「おーやーかーたー」


「流石だな。 もう頼まぬ」


全く、これで本当に生産人だろうか・・・
そう思いつつ、海蛇から剥いだ皮で装備を作ってくれるよう頼んでみた。





「革鎧は和風か? 洋風か?」



「出来ないことは頼まぬ。 無理をするな」


和風の鎧は難易度が高い。
少ない材料を無駄にしないためにも、そんな声をかけてみた。


「これでも伝説だぞ。 ようし・・・」


そう言って、親方が作って渡してきた物は、忍者風のジャケットであった。
おのれ小癪な。


渋々装備すると、心なしか前よりは強くなった気がする。
もっとも、見た目的には悪くなった気もするが。


親方はその勢いで、もう一品も強化を試みた。







「破壊」


「看板しまえ」


まったく、大した腕だ。


「ここらへんのくず鉄溶かせば、いい武器とか出来るんじゃないかなぁ?」


「親方の腕では無理だろう」


それ以前に、炉と金床が無いと鉄を溶かすことは出来まい。

親方が炉の代わりになる魔法の虫を呼んできたが、金床がないので何の役にも立たない。


「うちにくる? ひとそろえあるけど」

そう言ったのはシンディ殿だ。




「せっかくだし拝借するか?」


「うむ、ありがたい」


シンディ殿の申し出にありがたく乗ることにした。


「狭いけど。 この山の反対側だったよね」


いや、もう少し南だった気が・・・





しばらく進み・・・


「南だっけ?」


「おそらく」


「もっと南じゃ?」


エディン殿に指摘されるようでは、シンディ殿ももしかして・・・
そもそも自宅のはずでは。


そんな不安がよぎりつつ、己の記憶を頼りに南下する。




いよいよそこの角を曲がれば、と言うところでシンディ殿がふと言った言葉。


「ついてきてるかな?」


なぁに、さっきまで一緒にいたんだ、流石に・・・おや。



いない。


エディン殿が。



「もしや・・・ま・・・まい・・・」


「迷子?」



不覚、ここに来て油断した。
ここは、迂回して「Uの字」のように曲がって戻る道である。
恐らく、そのまままっすぐ行ってしまったのだろう。


そう思った私は、予想される方向へと進んだ。


途中、ゴリラの死体を発見した。
おそらく・・・エディン殿がやったのであろう。


しばらく進むと、最初に上陸した場所に着いた。
ふむ、ここから最初と同じ道をたどって進んだに違いない。


迷子とは、来た道を戻ろうとすると景色が変わって見えるために戻れないが、
同じ場所から同じ方向へ進む分には結構覚えている物である。


しばし東に向かいヒスロスの入口にたどり着き、そこから北上。
シンディ殿の家とおぼしき場所に、エディン殿はいた。
本人にとっては目的地に着いたのだから、迷ったつもりはないであろう。
物事はそんな単純ではないのだが。


皆を呼び寄せ、改めて中に入る。





「おじゃまします」


「おじゃまする」


「上にフォージとか有ります」


促されるままに、屋上へと上がる。





屋上に上がると、一気に視界が開ける。
海のよく見えるいい場所だ。


シンディ殿がなにやら、中を見て欲しい箱があるとのこと。
聞くと、良さそうな戦利品を入れてあるらしい。


「せっかくだから親方に真心込めてこわしてもらおー!」


早くも親方がどういう人物か伝わったと思う瞬間である。



しばしの間、鉄を叩く音と革を加工する音が鳴り響いた。


「成功率2割ってとこだな」


ほとんどは破壊してしまったが、一番良さそうな物の加工には成功したようだ。







「親方にしては上出来・・・」


「らしくない仕事だな」


チュニックの方はなかなかの出来である。





結果的に破壊しまくってしまったので、軽いお詫びとばかりに
こっそりと箱に地図を忍ばせておいた。
まぁ、自分で掘ることは出来なそうだが・・・


「これを今日の戦利品にしませんか?」


そう言いだしたのはシンディ殿だった。
私は最初、その言葉の意図する事がわからなかったのだが・・・

どうやら、カブトを私にくれると言うことらしい。
それは願ってもないことだ。





早速装備してみる。
・・・まぁ、今まで装備していた物より、性能は断然良い。
ありがたく頂戴することにした。







その後ルーンの交換等を行い、談話をしつつ楽しい時間が流れた。
そして・・・別れの時を迎えた。


「ではわたし、このへんで・・・」


「あい」


「世話になったな」


「いえいえ、楽しいひとときでした。 いつでもきてくださいね」


「この島に来ることがあったときには、是非よらせていただこう」


そんな約束を交わし、水辺へと向かう。
そこにはリオン殿が船の準備を済ませて待っていた。





「お気をつけて〜」


「ありがと〜」


「また会おう!」


別れを惜しみつつ、船は沖へと進んでいった。


「いい人だったね」


「ああ・・・」


そんな感傷に浸っていられるのは最初だけで、我々は再び船の揺れに悩まされるのであった。






「シーサーペントの切り身があるのだが・・・
まぁ、帰ったら姐御にでも焼いて貰うさ」



そんな事を話しつつ、ムーングロウへと向かう。
ただ、あの港は危険すぎる。

そう考えた私は、かつてRssショップがあった場所への上陸を提案した。
あそこなら降りてすぐに農家があるために、青房のエサを買うのに丁度良い。





「懐かしいな・・・」

上陸してすぐにその場所にはたどり着いたが、店は面影すら残っていない。


少し寂しさを覚えつつも農家へと向かった。
農夫より菜っ葉を購入し青房に与える。





「うまいか、青房」


きゅるるるるー


青房の嬉しそうな声が響く。


バックの中を眺めていると、神秘ジェムを発見した。
せっかく親方もいるし、これを使って今着ているローブを加工して貰おうと考えた。
これならば、失敗するまい。


「残念、HQじゃないと出来ない」


「高品質なんだが・・・ダメなのか」


「あれ、できた。 一回ダメだった・・・そこまで鈍ったか」


親方の腕に更なる疑問を持ちつつも、完成した品を受け取った。







「よし、皆の者も、今日は世話になったな
またいずれ、旅に出ようぞ」



そう言って、皆に別れを告げた。






青房を厩舎に預け・・・





ムーングロウで再び宿を取ることとした。
いやはや、今日は疲れた・・・