第一章・旅の連れ


・・・ずいぶんと長い間眠っていた気がする。

久々に目覚めた私は、自らの体の異変にとまどいながらも、ツインオークスの宿を後にした。


傷を癒すには騎士の力を使っても良いが、なにぶんコストがかかる。

ここはやはり、包帯を使うべきだろう。



宿を出て遙か西の方に歩くと、修業時代によく使った牧場があった。

そこには羊がいるので、少々毛を拝借することにした。

持ち主を見たことのない牧場だが、羊はいつまでも元気だ。



いくらばかりか刈った毛を、糸巻きで紡ぎ、織り機で布にする。

切った布に、先日買ったはさみを入れ包帯にする。



200枚の包帯が出来た。 これで当面は大丈夫だろう。


不意に頼まれごとを思い出し、手記を見る。



そうか、Elwoodとやらに頼まれてヴェスパーに行くところであったか。

思い出すやいなやゲートに向かい、ヴェスパーに近いミノックのゲートに出た。

・・・なにぶんヴェスパーにはまともに行ったことがない。

とりあえず南の方だった記憶があるので南に向かうと、街道に出た。



街道沿いに歩くと、ヴェスパーの町に着いた。

しかも、よく知っている銀行の側だ。 目的の場所もここの側のはず。



意外と迷うことなく目的の場所に着いた。

中にいたAlbertaに、話しかける。



すると、なにやら私に椅子に腰掛けるように勧めてくる。

・・・まて、私がモデルなのか?

ただ絵をもらってくるだけと聞いていた気もするが・・・

かといって断ることも出来ない私は、兜を脱ぎ椅子に腰掛けた。



Elwoodは私の肖像画なんぞが欲しかったのだろうか・・・

などと、しばらく考えていたところ。

通常では考えられないほどの速度で絵を仕上げたAlbertaが話しかけてきた。



絵の方は直接送ってくれるらしい。

・・・すると、本当に私はモデルになる為にここに来たようだ。

騎士たる物、日頃の身だしなみも怠ってはならない、そう感じた。



絵がElwoodのもとに届くまで時間があるだろうと思った私は、

ミノックではなくあえてブリテインのゲートに向かおうと思い立った。

ヴェスパーの町を南に抜ける。



途中なにやらミノックへのエスコートを希望する者がいた。

ミノックならば遠くはない、良いだろうとエスコートを受けたのだが・・



いっこうについてくる気がないのでそのまま置いてきた。

私はからかわれていたのだろうか。

それともあれは、女性に対してだけ発せられた言葉だったのだろうか・・・

そうこう考えながら街道を歩いていると、一匹の蜘蛛に遭遇する。



しかし、蜘蛛ごときでは私には傷一つつけること叶わず、地に伏した。



街道を更に歩くと、まだ暖かいモンスターの死体が散乱していた。

意外にこの街道も物騒だ。

先ほどの男のような者には危険な道だろう。

もしかして私は頼りなく見えたのだろうか・・・?



更に歩くと、野党達の死体が散乱していた。

向こうが悪いにしろ、人の死体は気分の良い物ではない。



更に歩くと今度はハーピーが襲ってきた。

しかし、やはり私の敵ではなかった。



路銀の足しにと懐を探ると、人骨が出てきた。

志半ばで倒れていった者の骨だろうか・・・



更に歩くと、なにやら見慣れぬ策が立っていた。

そういえば、この近辺には近頃オークが沸くと聞く。

安全の為に返り討ちにしてやろうかと思ったが、オークはその姿を見せなかった。



更に街道を進むと、野党が襲ってきた。

数も多い。 さすがに幾分の傷も受けたが、それでも苦戦するほどの相手ではなかった。

街道を更に進み、分かれ道をブリテイン方向に曲がる。

沼を迂回して山際を歩き、再び街道にもどる。



衛兵の詰め所を抜けた先は、さすがにブリテインに近いせいかモンスターは現れなかった。

しかし、旅をするにも徒歩は不便だと思った。

ブリテインについたら乗り物を調達しよう。



なにやら遠くの方から騒がしい。

ブリテインが近いようだ。

町の中を抜け、ブリテインの銀行前を通り過ぎようとしたときに、行商の者が目に入った。

どうやら騎乗生物を売っているようだ。

これはちょうど良い、と私は声をかけてみた。



「ミドリ殿。そこのオスタは売り物ですかな?」

昔の旅の相棒だったのは赤い森林オスタードのSix。

やはり私にはオスタードがしっくり来る。



「100gpですー」

ふむ。 こればかりはいつも変わらぬ値段だ。

街道で得た路銀もあるし、買えぬ値段ではない。

「ほほう。いただくとしよう」



料金を支払い、オスタードを受け取る。



「まいどありー」

「かたじけない」



せっかくだ、MIDORI殿に名前を付けていただこうと思い立った。

「すまぬが、名前を付けていただけないか?」

「名前ですか。うーん、センスないからなー」

「長い旅の友になるので」

「うちのうにこが白房なので、青房というのはどうでしょう?
それとも洋風の方が良いですか?」


なるほど、そこのユニコーンは確かに白房という名前だ。

自らにちなんだ名前を付けていただけることほど、嬉しいことはあるまい。

「いえ、あなたからいただいたと言うことが
判る方が喜ばしいので、それでよいです」


向こうはなにやら恐縮していたようだ。



私は早速オスタードに名前を付ける

「これであっていますか?」

「はい」



「こいつと二人で己を磨いて参ります!」

「はい。ご武運をお祈りいたします」

「それでは、失礼する!」

「はい。またどこかで会いましょう」

何とも気持ちの良い御仁であった。

世の中こういう人間ばかりなら良いのだが・・・


ブリテインの町を抜け再びゲートをくぐった私は、

ヘイブンにいるElwoodの元へと戻った。



・・・どうにもこの男の事は好きに慣れそうにない、そんな気がした。

これで終わりかと思いきや、Elwoodは再び次の依頼を頼んできた。



さ、サインをもらってこいと。

さすがの私もこれ以上つきあってられないと思ったが、

ここまで来たら最後までやってやろうという気も起こる。

とりあえず続きは明日にしようと思い、青房を預ける為の厩舎を探した。

・・・が、見つからない。

鍛冶屋なら荷馬を扱うから厩舎の場所も知ってるであろう、

そう思った私は鍛冶屋へと向かった。

先日世話になった鍛冶屋にて物を訪ねると、chainなる物が応答してくれた。



「すみませぬが、厩舎はどこにあるかご存じないか?」



「ヘイブンには厩舎無いので」

「そ、そうなのか・・・」

「誰もが通る道です」

なにやら話しているうちに、スカラブレイが近いらしいことを聞く。

まぁムーングロウでも良かったのでとりあえずヘイブンを去ろうと思い、



「ふむ、参考になった・・・」

と言ったのとほぼ同時に、chain殿がゲートを開いて下さった。



「入って。左の方にあるよー」

わざわざありがたいことだ。

礼を言いゲートをくぐり、左に・・・



・・・左は銀行だった。

少し探したが、少し上の方で厩舎を発見。



青房を厩舎に預けた。

さて、宿でも探そうと思うが・・・今度は宿が見つからない。

なにぶん、慣れない町では不便な物だ。



やっとの事で宿を発見した。



今日も一日、良い日であった。

そう思いつつ、その日は眠りについたのだった・・・